エストニアでは、国民の大半が持つデジタルネームとしてのeIDをベースに各公共サービスはもちろんのこと、登記、納税、選挙投票、学校の教育情報、病院のカルテまでがインターネット上で利用可能、というのは以前読んだWIREDの記事を通じて知っていた。
今回読んだ本は、エストニアにおけるICT推進の取組みが始まった経緯から、いわゆる電子政府としてのサービスのラインナップ、今後のエストニアICT戦略の展望、スタートアップ支援まで広く説明がされており、ざっと知っていたことを改めて知識としてインプットできた感じ。
面白かったのは、下記。
・エストニアのような電子政府がアタリマエになってる国家でさえ、最初はeIDを半ば義務化することでようやく普及までたどり着けた。(フィンランドではエストニアよりも前にeIDの普及を試みたが、実用的な利益がないと判断され失敗した経験から、フィンランドのエンジニアが、エストニアでの導入時に、eIDカードの所持を義務化せよ、と助言していたそう。)
・現在も、エストニアにおいて、130万人のエストニア人口のうち30万人はインターネットを利用できていないし、16-74歳の市民の18%はインターネットを利用する方法が分からない、というデジタルデバイド層は存在するということ。ただ、政府は2020年までにインターネット非利用者の割合を5%に減らすという明確な目標をおいて、ICT教育の徹底に努めていること。
・エストニアのインターネット投票利用率も導入当初の2005-2007頃は1.9%-5.0%程度であったが、直近は30%程度まで普及が進んでいること。
日本もマイナンバー導入が始まって、これから電子政府推進のための投資が増えていくわけだけれど、
・エストニアみたく、官僚にもITベンダーと互角に語れる技術を持つ人が必要だし、縦割り組織を横断できるCIO的な存在が必要
・一度、推進すると決めたら、初年度の効果が悪くても推進しきる。もちろん推進の経緯と目的はきちんと説明が必要。(以前、外務省が「パスポート電子申請」を始めたが導入後3年で133件しか使われず、2005年に廃止した、という話が書かれていた。むっちゃ便利やん!いまあれば絶対使う。)
・バラバラといろんなIDで公共サービスをインターネット化していくのはやめる(eIDはマイナンバーに統一、とか。いまは「ねんきんネット」も「e-Tax」も別IDで開発されてるけど微妙だよなあ、、)
と思った。
なお、直近でいうと、平成31年度予算案で電子政府まわりの予算が増強されてますね。
政府情報システムの集約化等に伴う政府共通プラットフォームの整備、経常統計調査の改善等
① 政府共通プラットフォーム整備等 55.2億円 ⇒ 78.4億円
② 電子政府の総合窓口システム(e-Gov)更改 6.6億円 ⇒ 8.6億円
※参考:https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/seifuan31/09.pdf
データ整備関連で今後ますます投資強化されていく流れですね。今後の動向も引き続きウォッチしていきたい。
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