2019/02/24

旅館業と飲食業の事業者情報についての開示請求をした話

国や自治体がもつ各種ドキュメント・データを市民が使いやすい形で整備・公開する、という取り組みをプライベートでやっています。
先日Airbnbがプレス発表していた「日本へのご旅行を予定されているゲストの皆様へのサポートについて」を読みました。土壇場で観光庁がとった方針通知は民泊を運営する人たち、利用するユーザー、あるいはAirbnbのようなプラットフォーマーにとってビックリするものだったと推測しますが、一方で、国としても民泊の業者品質を上げていきたいと考えているし、民泊を利用するユーザも自分たちが泊まるところがきちんと許可を受け運営されている場所なのかを知りたいはずだろう、とも思いました。そして、そういえば旅館や民泊の許可届け出がされている業者ってどこに管理されているのか?を知りたくなりました。

せっかくなので、普段の生活の場面のなかで重要そう、かつ運営には特別な許認可が必要な業態について、その事業者の一覧ってどこにどんな形式で公開されているのかを調べてみました。
とりあえず、飲食店、旅館、民泊の東京都内23区について調べてみた結果がこちらです。
[旅館業・飲食業者の一覧 - Google スプレッドシート]
[民泊の事業者の一覧 - Google スプレッドシート]

まず、住宅宿泊事業者の情報は、殆どの自治体で公開されていることがわかりました。世間的な注目度が高いことも関係しているんでしょうか。
※補足ですが、住宅宿泊事業に関連した事業者には、ほかに住宅宿泊管理業、住宅宿泊仲介業というものがあり、これらはそれぞれ国土交通省地方整備局、観光庁の管轄らしい。。

それに対し、飲食店や旅館については殆どの自治体で公開されていないことがわかりました。
公開されている場合も、例えば新宿区と千代田区は旅館業の業者一覧をWebサイトで公開しているけれど、カラムの個数と名称ラインナップが違うことに気づきました。とくに、業者を一意に特定する許可番号がある自治体とそうじゃない自治体がありそう。。

いろいろ気になることはあるものの、事業者の一覧を公開していない自治体へ、事業者の一覧を開示請求してみることにしました。

どうやって請求するの?

自治体によって違うようです。中央官庁とは違い、e-Govでの申請はできませんが、東京都の各自治体共同の電子申請があります。

東京共同電子申請・届出サービス

ただし、江戸川区と千代田区は電子申請ができないみたいです。
一方、各自治体の情報公開請求についてのページを見る(「○○区 情報公開」などとググれば出てきます)と、請求書の雛形と受付方式についての案内があります。窓口・郵送での開示請求は原則可能で、電子メールでの請求書送付も一部の自治体で受け付けているようです。

請求書提出から開示までにどのようなやり取りがあるの?

実際にやってみたときの流れをまとめるとざっくりこんな感じ。
(1)担当者から、請求書に記載の連絡先へ電話がくる
(2)細かい要件のヒアリング(「どういう項目がほしいですか?」とか)
(3)開示決定OKかどうかの検討
(4)開示決定通知
(4)も自治体により違っていて、①電話で連絡、②請求書の住所に通知書が届く、のどちらかであることが多いです。(②の場合電話連絡はないことが多いので、郵便受けを見忘れていて少し焦る)
また、その際にファイルの納品形式についてのやり取りがあり、これも自治体により違ってきます。
・公開手数料の支払い形式:定額小為替の送付or自治体作成納付書による納付
・返送用封筒、切手、CD-Rケース:手数料と合わせて納付し、自治体が用意してくれるケースと、こちらで用意し郵送するケースの2種類あります

どのようなデータを開示してもらえるの?

施設名称、住所、電話番号、その施設の営業者名(≒社名)、代表者名、営業者住所、種別(旅館の場合、旅館/ホテル/簡易宿所/下宿など)、許可日、許可番号を一覧化したものを開示してもらえます。
ただ、項目名称が自治体によって違っていたり、住所項目の切り方が違っているので、読み解くにはひと手間必要そうです。
例)新宿区、中央区、世田谷区それぞれから開示された旅館業の一覧(キャプチャは開示結果から抜粋)
・新宿区
・中央区
・世田谷区

開示請求をしてみて分かったこと

・たとえば、食品営業許可の許可番号の形式は「<申請年度><自治体略称>保生食許第xx号」。<申請年度>のところは、年度だから4月1日-3月31日で決まる。平成29年5月20日なら29、平成30年1月19日も29というもの。<自治体略称>は千代田区の場合「千千」が入る。第xx号のところの表示形式は11の場合は0011号とかじゃなくて11号が正解。ただし、この開示請求を担当してくれた千代田区保健所の方が教えてくださったのですが、第xx号に0つけるかどうかは行政区の管理に任されてるらしくて、区によりマチマチとのことです。さらに、本来「<申請年度>千千保生食許第xx号」という形式で許可番号を出力できればいいのだけれど、千代田区の食品営業許可事業者を管理するシステムがあり、その仕様上、数字の部分のみ入力・管理されているそう。(他のところは自明といえば自明だけどね。。。)

請求するFMTを指定しないと、紙で出力されてしまうこともあります。中央区へ開示請求したときに、ほしい形式を伝えなかったために、紙に印刷されたものをもらいました。データでほしい場合が殆どだと思うが、認識齟齬がないよう、そこはきちんと伝えるほうがよいと思いました。

・一方、情報公開条例により、こちらで指定した形式での開示ができない場合もあるそうです。
例えば、新宿区の場合、
情報公開条例12条1項(2):
電磁的記録 当該請求公文書の種別による固有の性質を考慮した上で、公開の実施に伴い必要となる機器の整備状況その他の実施機関の情報化の進展状況を総合的に勘案して実施機関が定める方法
を根拠として、
csv形式などは出せず、PDFでの開示なら可能と回答をもらいました。管理システムの仕様上PDFでしか出力できないのと、PDFならOKという判断の背景は、開示後の改竄を防ぐため、とのことでした。(PDFもパースできるので、そもそも自治体が公開しているものを正とする、というスタンスのもとHP公開されているほうがいいのでは...と思いました。)
※参考:新宿区情報公開条例

また、目黒区の場合は、同区情報公開条例(http://www1.g-reiki.net/meguro/reiki_honbun/g111RG00000158.html)により、紙でしか出せないとのことでした。。その結果、400枚弱の開示結果がうちに届きました。。。元々電子データで持ってるものを印刷するのは自治体の方も受け取る側も手間がかかりすぎるのでやめたほうがいいと思いました。。。

さいごに
今回一連の開示請求をした結果、
・許認可がないと運営できない事業者でも、その情報は開示されていないことが多い
・開示請求することは可能だが、そもそも開示するファイル形式がPDFだったり(目黒区に関しては紙…!!( ゚д゚))、データ項目が揃っていないことから、自治体を横断してデータ統合することが難しい
・開示結果はメールなどでもらうことができず、CD-Rケースを送るなど、かなり時間と手間がかかる
ことがわかりました。

こういったデータは自治体内で保有・管理しているものであることがわかったので、本来的にはオンライン開示されているべきであり、そのほうが市民・自治体双方にとり手間削減につながるものかと思います。
ただ、自治体の仕事はこれに限らず多岐にわたるため、市民の要望の多いものから対応しているのかもしれない、と思ったので、「そもそも自治体にはどのような情報公開請求がされているものなのか?」を調べたいと思いました。

次回は、「官庁や自治体にはどのような情報公開請求がされているのかを調べてみた結果」について書きたいと思います。

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