2019/04/14

どのような情報公開請求がされているのかを調べてみた

国や自治体がもつ各種ドキュメント・データを市民が使いやすい形で整備・公開する、という取り組みをプライベートでやっており、前回は、国や自治体の許認可が必要な事業者(飲食業、旅館業、民泊など)の情報を開示請求した経緯と結果について書きました。(詳細は以前書いた記事「観光庁が民泊事業者をデータベース化し違法物件の排除を始めているそう。23区の民泊の一覧をまとめてみた。」や「旅館業と飲食業の事業者情報についての開示請求をした話」に書いています。)
事業者情報の開示請求をやってみて、「そもそもどのような内容の開示請求をされていることが多いのか?」ということに疑問を持ち、「開示請求の開示請求」をやってみることにしました。

対象としたのは、厚生労働省、国土交通省、そして自分にとって馴染み深い東京都の3つ。「いつ・誰が」「どういう行政文書について開示請求をしたのか」「開示結果はどうだったのか」を請求内容としました。

その結果、わかったのは
・東京都は「情報公開の状況」を組織毎に毎月Web上に公開している。
・厚生労働省と国土交通省は、「情報公開の状況」をWeb上に公開していないが、「開示請求の進行管理表」を内部で作成・管理している。
・厚労省は「開示請求の進行管理表」の開示OK(ただし、後述するように、開示する前に「本当にOPENにしてよいか?」をチェックするのに時間がかかるので全量はまだ開示されていない)
・国交省も「開示請求の進行管理表」の開示OKだが、同じく後述するように、行政文書の保存期間にルールがあり、過去の進行管理表は削除してしまっている。

というものでした。

東京都は「情報公開の状況」を組織毎に毎月Web上に公開している

東京都の情報公開課のご担当者から「組織毎に情報公開の状況を月単位で公開している」旨をご回答いただけました。ただ、そもそも東京都にはどのような組織があり、それぞれのWebページはどれに該当するかが分からなかったのでその旨ご質問したところ、
東京都の組織図」に表記のある組織が全体像で、その単位で公開されていることを教えていただき、こちらの通り一覧化してもらうことができました。(ご担当者様、丁寧なご回答ありがとうございました!)
東京都の情報公開請求状況の開示先一覧 - Google Spreadsheets
この内容を踏まえ、「東京都に対し都民(国民)はどのような内容を公開することを求めているのか?」は今後ブログにupしようと思います。


厚労省は「情報公開の状況」をWeb公開していないが、「開示請求の進行管理表」は内部で行政文書として作成している。ただし…

厚労省は「情報公開の状況をWeb等で一般公開していない」とのことでした。ただ、情報公開請求された事案ごとに受付日時、請求元と開示/不開示の結果をまとめた一覧(=開示請求の進行管理表)を作成しているそうで、それであれば開示可能、という回答をもらいました。情報公開の状況が分かるものっぽいぞ…!ということでこちらを開示いただくことになったのですが、その進行管理表に「本当に外に公開してもよい内容かどうかチェックする必要がある」とのことで、ひとまず平成29年度4月の開示請求の一覧のみ共有いただけました*1

開示いただいた進行管理表はこちらです。
・H29進行管理4月([PDF(Dropboxへ遷移します)][Google Spreadsheets])
※厚労省から開示されたのはPDF。非常に読みづらかったのでAdobe Acrobatでスプレッドシート変換しました

平成29年度4月に厚生労働省へ開示請求があったのは409件*2
うち、医療機器の製造販売承認についてのドキュメント開示請求は207件。医薬品の製造販売承認についてのドキュメント開示請求は102件あり、厚生省への開示請求の多くが医療機器・医薬品の製造販売を進めるにあたって提出している資料や承認有無やその判断根拠についてのドキュメントの請求であることがわかりました。


国交省は「情報公開の状況」をWeb公開していない。そして、行政文書の保存期間にルールがあり、過去の「開示請求の進行管理表」は削除してしまっている

国交省も厚労省と同じく「情報公開の状況」を一般公開していないとのこと。しかも、開示請求の進行管理表について、過去のものは削除してしまっているそうです。。
「不開示決定通知」の結果はこちら。
行政文書不開示決定通知(Dropboxへ遷移します)

読んでみると、国交省の行政文書管理規則14条6項により「進行管理表」の保存期間は1年未満のため削除してしまった。とあります。
該当の14条6項は
第12条第1号の保存期間の設定においては、次に掲げる類型に該当する行政文書 (第4項、前項及び第7項の規定に該当するものを除く。)について、保存期間を1 年未満とすることができる。
一 別途、正本・原本が管理されている行政文書の写し
二 定型的・日常的な業務連絡、日程表等
三 出版物や公表物を編集した文書
四 国土交通省の所掌事務に関する事実関係の問合せへの応答
五 明白な誤り等の客観的な正確性の観点から利用に適さなくなった文書
六 意思決定の途中段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響がないものと
して、長期間の保存を要しないと判断される文書
七 保存期間表において、保存期間を1年未満と設定することが適当なものとして、
業務単位で具体的に定められた文書
今回の「進行管理表」は上項四・六あたりに該当しそうです。

更に14条の10項には
第12条第3号の保存期間の起算日は、行政文書を行政文書ファイルにまとめた日 のうち最も早い日(以下「ファイル作成日」という。)の属する年度の翌年度の4月1 日とする。ただし、ファイル作成日から1年以内の日であって4月1日以外の日を起算 日とすることが行政文書の適切な管理に資すると文書管理者が認める場合にあっては、その日とする。
とあります。したがって、
開示請求した平成29年度の進行管理表の起算日は、属する年度の翌年度の4月1日、つまり2018年4月1日になり、14条の6項に基づけば、2018年4月1日以降であればたとえ翌日などに削除しても問題ないことになってしまいます。(保存期間1年未満という条件を満たすので)
以上、まとめると、


ということになるかと。保存期間1年未満だと、国交省の外の人からは、前年度のドキュメントを見る手段がなくなってしまうってことになり、見るのほぼ不可能じゃない!?笑*3
ただ、少し目線をプロセス全体に向けてみると、


つまり、①国民から提出された開示請求書、②開示/不開示の結果通知書、③実際に開示した行政文書、については行政文書管理規則14条6項に該当しなさそうなので、開示請求できるのでは?というアイデア*4のもと、こちらを開示請求してみることにしました。
こちらも結果が返ってき次第、まとめようと思います。

まとめと所感

(1)東京都、厚労省、国交省へ「情報公開の履歴」を開示請求した結果、
市民が何の情報公開を求めているか?が分かる開示請求の履歴は、「開示請求の進行管理表」というドキュメントで管理されている
東京都はそのドキュメントを個人情報をマスキングした形でWeb公開している
厚労省はWeb公開していないが過去分も保管しており、(マスキング作業などに時間がかかるため?)開示に時間がかかる
国交省は、年度が変わると、内部で定めた保存終了期間以降は前年度の進行管理表を削除している
ということがわかりました。

(2)厚労省の「情報公開請求の履歴」を見ていると、医薬品や医療機器の製造販売に必要なドキュメントの開示請求が多いことがわかりました。
請求元がマスキングされているので想像でしかないのですが、過去製造販売の承認を受けた医薬品・医療機器について調査する目的で開示請求されているケースが多いのでは?と思ったのと、今後人口減少・高齢化していく日本の主たる輸出産業であり、国家収入を支えるのはヘルスケア領域であるとすると、競争力強化のために医薬品・医療機器の製造販売申請業務の手間をできるだけ下げることが重要で、開示決定がなされた行政文書はもっとアクセスしやすい形で公開していくべきだと考えます。

以上。

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*1: 開示決定通知書はこちら。この通知書の前に「開示決定等の期限の特例規定の適用について(通知)(Dropboxへ遷移します)」という書類をいただきました。
開示・不開示の審査に相当の時間を要するほか、他の開示請求に関する事務と輻輳し、当該開示請求から60日以内(平成30年8月30日まで)にすべての開示決定等をすると、その他行政事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある
ため、残りは2019年の7月中にもらえるとのこと。
*2: 厚生労働省配下の中央労働委員会は開示請求の窓口が異なるため、「厚生」(=医療・福祉)に関わる開示請求の一覧と捉えてもらって差し支えないです。
*3いちおう、行政文書の廃棄記録はWebページ自体は存在するけど、メンテされていないっぽい。(行政文書ファイル等の廃棄の記録(保存期間1年未満) - 国土交通省
*4もちろん、個人情報は不開示だが、マスキングされた状態で「請求する行政文書の名称等」については開示OKなはず。