2017/03/20

出口治明さんの「全世界史講義1」を読んだ

よくこんな細かい話まで、しかも分かりやすく書けるもんやなあ、と驚きながらも楽しく読むことができた。


語りがうまいというのもあるけど、個々のエピソードはとても面白いものが多く、「へぇ」と思うものもあったのだけれど、それは割愛するとして、学んだことはざっくり3つあった。


(1) 「外界を支配したい」と思うようにヒトの脳が進化したことから「ドメスティケーション」が始まった。それは、狩猟採集生活から農耕牧畜社会への転換であり、植物を支配する「農業」に始まり、動物を支配する「牧畜」、金属を支配する「冶金」、そして、自然の摂理を支配する「神」という概念(=「宗教」)を生み出した。
ドメスティケーションにより、農耕牧畜社会へ変わると、食料の過剰に生産されるようになり、貧富差が生まれた。食料生産に直接的に携わらない支配層や商人といった寄生階級が生活するための「都市」が生まれ、都市国家ができ、そして国ができた。


(2) 国の隆盛は、宗教やイデオロギーに左右されてきた。例えば、1138年、遊牧民国家・金による宋への攻撃に対し、秦檜という宋の政治家が中国の北側を金に譲り、加えて年貢を収める和議を実現させた。秦檜は以南の開拓と交易による収益により、国家財政は充分維持できると考え、その決断に至ったが、同国の軍人・岳飛が金との徹底戦争を主張し、朱子学を基礎としたイデオロギー(=漢民族による政権が正統である)に支配された世論も手伝った結果、秦檜は処刑され、後世において国賊として扱われることとなった。


(3) ドメスティケーションが農耕牧畜社会と遊牧民を生み出した。それぞれの勢力関係はしばしば、地理的な特性や気候の変化により変化してきた。例えば、気候が寒冷化すると、家畜の食べる牧草を求めてユーラシアの遊牧民族は南下し、しばしば中国の国境を脅かす存在となった。


続編の2巻もぜひ読んでみたいと思うけれど、ぼく個人のモチベーションとして、歴史の各エピソードを知りたいというよりも、以下のことを自分なりに理解したいから歴史を知りたいと思っていることに気づいた。


・国家は何の要因によりどのように興亡してきたのか
・宗教や科学はどのように生まれ、(途中、一見退化とも見て取れる変遷を経ながらも)どのように進化してきてきたのか

というわけで、同2巻を読み進めつつ、ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」、スティーブン・ワインバーグの「科学の発見」を読んでみようと思う。思わずAmazonでポチったけど高かった。。